日本からタイに移ると、日本では「非居住者」になり、タイでは1年に180日以上いれば「居住者」になる。税の負担が軽くなる人は多い。住民税がなくなり、最高税率が下がり、国外のお金はタイに持ち込まなければタイで課税されない。一方で、日本の年金・出国税・相続の10年ルールのように、移っても日本の税金が残るものもある。この章では、移住で何が変わるのかを、メリットと落とし穴の両方から説明する。
日本に住んでいるとき・タイに移ったあと
スマホでは表を横に送れる。
| 日本に住んでいるとき | タイに移ったあと | |
|---|---|---|
| 課税される所得 | 世界中の所得 | 日本:日本で生じた所得だけ タイ:タイの所得と、タイに持ち込んだ国外の所得 |
| 所得税の最高税率 | 45.945%(復興特別所得税こみ) | タイ 35% |
| 住民税 | 10% | なし(12月31日までに転出すれば翌年度から)。タイには地方の所得税がない |
| 合わせた最高税率 | 約55.9% | 35% |
| 株の売却益 | 20.315% | タイの上場株は非課税。日本株は日本では原則として課税されない(タイに持ち込めばタイで課税) |
| 配当・利子 | 20.315% | タイ株の配当10%・タイの預金利子15%の源泉で終わりにできる。日本の配当・利子は日本で15.315% |
日本から移る人が受けられること
日本の税金は、思ったより追いかけてくる
だれが、どの所得に
① 2024年1月1日以降に生じた所得
② 生じた年にタイの居住者だった
③ その年かそれ以後にタイに持ち込んだ
税率(個人所得税)
| 課税される所得(年) | 税率 |
|---|---|
| 15万バーツまで | 0% |
| 15万〜30万バーツ | 5% |
| 30万〜50万バーツ | 10% |
| 50万〜75万バーツ | 15% |
| 75万〜100万バーツ | 20% |
| 100万〜200万バーツ | 25% |
| 200万〜500万バーツ | 30% |
| 500万バーツを超える分 | 35% |
超えた分にだけ高い率がかかる(累進)。日本で払った税金は、日タイ租税条約でタイの税金から差し引ける。
日本で課税され続けるもの
| 所得 | 日本での扱い(非居住者) |
|---|---|
| 日本の公的年金 | 20.42%の源泉徴収(月5万円、65歳以上は月9.5万円を引いた額に) |
| 日本の不動産の家賃 | 20.42%の源泉徴収(借り主が個人の自宅用なら除かれることがある)と、確定申告 |
| 日本の会社の役員報酬・日本での勤務の給与 | 20.42%の源泉徴収 |
| 日本の上場株の配当・預金の利子 | 15.315%の源泉徴収 |
| 日本の上場株の売却益 | 原則として課税されない(大口の売却などは例外) |
| 退職金 | 20.42%の源泉徴収。申告すれば、居住者と同じ退職所得の控除を使って還付を受けられる(選択課税) |
出国の前にすること
- 納税管理人を決めて、税務署に届ける出国の日までに。届けないなら、出国までに申告と納税を済ませる
- 出国した年の住民税の払い方を、市区町村と決める
- 有価証券が1億円以上あるなら、出国税の申告と納税猶予を準備する
- 証券会社・銀行に非居住者になることを届け、NISA と口座の扱いを確かめる
- 年金の受け取り口座と、国民年金の任意加入を決める(🏠 日本側でやること)
出典: 国税庁 No.2012 居住者・非居住者の判定/同 No.2884 非居住者への源泉徴収税率/同 No.1478 国外転出時課税/同 No.2260 所得税の税率/同 納税管理人の届出/同 退職所得の選択課税/総務省 個人住民税/日本年金機構「海外に住む方の年金」と租税条約の国の一覧(令和7年1月)/日タイ租税条約/タイ歳入局 ป.161・ป.162 の Q&A/同 個人所得税の税率/勅令743号(LTR)/国税庁 CRS の報告対象国。NISA・タイの年金の控除・金融取引税・暗号資産・改正案の状況は、証券会社と会計・法律事務所の資料と報道による(2026年10月6日確認)
日本の相続税の「10年ルール」
日本の相続税は最高55%。タイに移っても、日本国籍なら亡くなった人と受け取る人のどちらかが、亡くなる前の10年以内に日本に住んでいれば、タイの財産も含めて世界中の財産に日本の相続税がかかる。日本の財産だけで済むのは、ふたりとも10年を超えて国外に住んでいるときだけ。贈与税も同じしくみ。
| 亡くなった人(親)と、受け取る人(子) | 日本の相続税がかかる財産 |
|---|---|
| 親が日本に住んでいる | 世界中の財産 |
| 親がタイに移って10年以内 | 世界中の財産 |
| 子が日本に住んでいる、または10年以内に住んでいた | 世界中の財産 |
| 親も子も、10年を超えて国外に住んでいる | 日本にある財産だけ |
タイの相続税と贈与税
移住で変わること
- 親も子も10年を超えて国外に住めば、日本の相続税は日本にある財産だけになる
- タイの相続税は1億バーツまでかからず、税率も5〜10%(日本は10〜55%)
- タイでは、家族からの贈与が年2,000万バーツまで非課税
相続・贈与のときの出国税
日本に住む親が、株などの有価証券を1億円以上持っていて(過去10年のうち5年を超えて日本に住んでいたとき)、亡くなったり贈与したりしてタイに住む子がその株を受け取ると、含み益に所得税がかかる(国外転出(相続・贈与)時課税)。相続のときは4か月以内に準確定申告をする。手続きをすれば納税を5年(延長で10年)待ってもらえ、その間に子が日本に戻れば取り消せる。
どちらの国の法律で分けるか
家族がすること
原本は再発行できない。亡くなった時刻(時・分)まで書いてもらう。書かれていないと相続の手続きに差し支えることがあると、大使館が注意している。
大使館経由だと戸籍に載るまで1か月以上かかる。本籍地へ直接出すこともできる。日本の相続放棄の期限(3か月)と相続税の申告期限(10か月)も、ここから数える。
タイの銀行口座は凍結され、裁判所の命令がないと払い戻しも名義の書き換えもできない。相続人が国外にいることも、申し立ての理由になる。検察庁(OAG)に頼めば申し立ては無料(裁判所の手数料200バーツは別)。全体で数か月かかる(法律事務所の目安で4〜8か月)。
外国人の相続人は、条件に当たらなければコンドを1年以内に売る必要がある、と法律事務所は解説している(コンドミニアム法19条の7)。土地は大臣の許可がなければ、決められた期間(180日〜1年)のうちに処分する(土地法93・94条)。
タイの財産には、タイの遺言を
日本の公正証書遺言も、方式としてはタイで認められうる。ただしタイの裁判所で使うには、翻訳、日本の外務省の公印確認、在日タイ大使館の領事認証(タイはアポスティーユ条約に入っていない)と審理が要り、時間がかかる。そのためタイの財産だけを対象にしたタイの遺言を別に作っておくことを、複数の法律事務所が勧めている。遺言で遺産管理人を決めておけば、裁判所はその人を選ぶ。
出典: 国税庁 No.4138 相続税の納税義務者/同 No.4432 贈与税の納税義務者/同 No.4155 相続税の税率/同 No.4152 基礎控除/同 No.1468 国外転出(相続)時課税/法の適用に関する通則法/タイ相続税法(歳入局の英訳)/タイ歳入局 贈与の課税/在タイ日本国大使館「死亡届」/タイ検察庁(遺産管理人の申し立て)/タイ内務省地方行政局(遺言)/外務省(アポスティーユ)。抵触法・コンドミニアム法・土地法の扱いと手続きの期間は、法律事務所の解説による(2026年10月6日確認)
税金・節税も含めた移住のご相談
いつ、どのビザで移るか。
税金の話も含めて段取りを組みます
住民税がかからなくなる転出の時期、国外のお金を持ち込む順番、LTR のように税の優遇がつくビザを使えるか、相続の10年ルールをどう考えるか。ビザと移住の段取りと一緒に、税金と相続のご相談も承ります。
- 1今の状況を書いて送る年齢・お仕事・資産や年金のおおよそ
- 2合うビザと移住の段取りをご提案メールでお返事します
- 3税金も含めた進め方をご案内費用はご提案のときにお知らせします